主な病気と治療方法

Disease & Treatment

白内障手術

白内障とは

白内障について

白内障は、眼の中の水晶体が加齢などにより濁ってしまい、視力が低下する病気です。水晶体はカメラのレンズのような役割を果たしており、濁りが生じると、すりガラス越しに見たような霞みや、光がギラギラ眩しく感じるなど、全体的に見えづらくなります。濁った水晶体は光の通り道を妨げるため、視力が低下してしまいます。

白内障手術について

白内障の治療は、濁った水晶体を取り除き、人工の透明な眼内レンズに置き換える手術です。現在は超音波乳化吸引法が主流で、器械の進歩により切開は2〜3mmと小さく、手術侵襲や時間も短縮され、患者さんへの負担は少なくなっています。手術は局所麻酔で行われ、多くの場合、痛みはほとんどありません。
眼内レンズは袋状の水晶体嚢の中に挿入され、手術は終了します。レンズには度数があり、近視や遠視といった屈折異常を同時に矯正することも可能です。ただし、通常の単焦点レンズではピントの合う範囲が限られており、術後も日常生活では眼鏡の使用が必要となることがあります。遠くにピントを合わせれば裸眼で遠方が見やすくなり、近くに合わせれば手元が見やすくなります。術後は見え方や眼鏡の使い方が術前と変わるため、十分な理解が必要です。

当院での手術体制

当院では日帰り手術と入院手術の両方に対応しています。近隣にお住まいの方やご自宅で休養を希望される方には日帰り手術を行い、翌日に外来で診察します。遠方の方やご高齢の方は1泊入院していただき、翌朝診察で問題がなければ退院となります。患者さんの生活環境や希望に合わせて柔軟に対応いたします。

手術までの流れ

外来受診から術前検査まで

まず執刀医による診察を受けていただきます。瞳を開く散瞳検査を行い、白内障手術の適応があると診断された方には、手術日を決定いたします。その際、手術前検査や手術前診察のご予約をお取りし、必要に応じて当日検査も行います。内服中のお薬がある方は、必ず薬剤名をお知らせください。
手術までの待機期間は通常1~2か月程度ですが、症状の程度によっては前倒しを検討します。術前検査では、眼科検査として眼軸長測定や角膜内皮細胞数検査を、全身検査として採血・心電図などを行い、安全に手術を行えるかを確認します。

手術当日

日帰り手術の方、当日入院の方ともに、予定時間までに受付を済ませていただきます。その後、待機室にて準備を整え、手術を受けていただきます。日帰り手術の場合は、術後の状態を確認し問題がなければその日のうちにご帰宅いただけます。入院手術の場合は翌朝まで入院していただき、朝の診察で異常がないことを確認した後に退院となります。

術後の診察

術後の経過観察は非常に重要です。診察スケジュールは、手術翌日、1週間、1か月、3か月、半年、1年の計6回を基本としています。ご紹介いただいた患者様については、原則として術後1週間の診察を当院で行った後、紹介元の眼科にて引き続き経過観察をお願いしております。これにより、かかりつけ医と連携しながら、安心して治療を継続していただけます。

多焦点眼内レンズ

多焦点眼内レンズについて

白内障とは、目の中の水晶体(レンズ)が加齢などにより濁り、視力が低下する病気です。初期の段階では手術の必要はありませんが、進行すると眼鏡をかけても見づらさが残り、日常生活に支障をきたすようになります。その場合、手術で濁った水晶体を取り除き、人工の眼内レンズに置き換える治療が行われます。

眼内レンズには大きく分けて「単焦点眼内レンズ」と「多焦点眼内レンズ」の2種類があります。
単焦点眼内レンズは、ある一点にピントが合うレンズです。すべての距離にピントを合わせることはできず、多くの場合で眼鏡の併用が必要になります。ただし、ピントが合う距離では、多焦点レンズに比べてより鮮明に見えるのが特徴です。

一方、多焦点眼内レンズは、ピントの合う位置を遠くと近くの2点に分けたレンズです。眼鏡の使用頻度を減らせる利点がありますが、すべての距離にピントが合うわけではありません。光を複数に分ける仕組みのため、コントラストがやや低下し、暗所では光がにじんで見える「ハロ・グレア現象」が生じることがあります。そのため、精密作業や夜間運転を日常的に行う方には不向きな場合があります。
また、多焦点眼内レンズは手術後に徐々に慣れることが多いですが、両眼に挿入しても見え方にどうしても順応できない場合は、単焦点眼内レンズへの交換が必要となることもあります。

どの眼内レンズが適しているかは、生活スタイルやご希望によって異なります。詳しくは担当医とご相談のうえで、最適な方法を選択していただくことが大切です。

費用

白内障手術で使用する眼内レンズには「単焦点眼内レンズ」と「多焦点眼内レンズ」があります。
単焦点眼内レンズを用いた白内障手術は通常の保険診療で行われます。一方、多焦点眼内レンズを使用する場合は、保険診療に加えて「選定療養」として定められており、通常の診療費とは別にレンズの費用をご負担いただく必要があります。

選定療養とは、患者さんが希望して受ける追加的な医療サービスであり、その費用は全額自己負担となります。令和2年4月から、多焦点眼内レンズを用いた白内障手術は厚生労働省の定める選定療養の対象となり、全国の届出医療機関で実施可能となりました。当院も多焦点眼内レンズを用いた手術を行う医療機関として届出をしています。

当院での多焦点眼内レンズの費用は以下の通りです(通常の診療費に加えて必要となります)。

多焦点眼内レンズの種類 金額(税込)
テクニス マルチフォーカル ワンピース 135,700円
アルコン アクリソフIQ PanOptix シングルピース 162,100円
アルコン アクリソフIQ PanOptix トーリックシングルピース 184,100円

なお、多焦点眼内レンズを希望される場合には、生活スタイルやご希望に応じて適応を確認し、診察時に医師より詳しくご説明いたします。

網膜硝子体手術

網膜硝子体手術は、眼の奥にある硝子体腔に生じる病気に対して行う手術です。近年の手術器械や技術の進歩により、かつては難治性とされた疾患も治療可能となってきました。当院では網膜硝子体手術を専門とする瓶井教授をはじめ、複数の熟練術者が在籍しており、緊急性の高い網膜剥離などにも迅速に対応できる体制を整えています。

網膜は眼の奥にある薄い膜で、カメラのフィルムに相当する部分です。障害されると視力が低下し、読書やテレビ視聴など日常生活に大きな支障をきたします。硝子体は瞳の奥にあるゼリー状の透明な組織で、眼球の形を保つ役割を担っています。これらに病変が生じると視力低下や視野異常が起こり、高血圧や糖尿病といった全身疾患が背景にあることも多いため、内科的な管理も重要となります。
手術では、濁り(硝子体混濁)や出血(硝子体出血)を取り除き、眼内を透明な状態に戻します。また、網膜にレーザー光凝固を行ったり、黄斑上膜のように膜が張っている場合はこれを剥がします。網膜剥離では、網膜を復位させるために空気や特殊なガスを注入し、網膜を安定させます。
当院では25G(0.5mm)、27G(0.4mm)の極小切開手術機器を導入しており、非常に小さな切開から手術が可能です。これにより術後の炎症が少なく、創口も自然に閉じやすいため、入院期間の短縮が期待できます。ただし、視力の回復には時間がかかることもあり、ガス注入を行った場合には約1週間の下向き姿勢が必要となることがあります。

網膜硝子体手術は高度な専門性を要する治療ですが、当院では安全性と確実性を重視し、患者さん一人ひとりの病状に合わせた最適な治療を提供しています。

適応疾患

黄斑上膜

網膜の中心にある「黄斑」に膜が張る病気です。黄斑は視力にもっとも重要な部分で、膜が生じると視力低下や物が歪んで見える、実際より大きく見えるといった症状が現れます。

黄斑円孔

黄斑部分の網膜に穴があく病気で、視野の中心が見えにくくなります。中心視力に大きく関わるため、日常生活への影響が強いのが特徴です。

硝子体出血

目の奥にある硝子体腔に出血が起こり、急に視界が遮られる病気です。糖尿病や高血圧、網膜剥離などが原因となることが多く、超音波検査で眼内の状態を確認します。網膜剥離が疑われる場合は緊急手術が必要になることもあります。

糖尿病網膜症

糖尿病によって眼内の血流が悪化すると、網膜に新しい血管(新生血管)が生じます。これらは非常にもろく出血しやすい血管で、そこから膜(増殖膜)が形成されると網膜を牽引して網膜剥離を起こすことがあります。糖尿病網膜症は進行すると失明につながる危険があり、手術を行っても視力回復が難しい場合もあります。そのため、内科での血糖コントロールが極めて重要です。

網膜剥離

網膜が眼底から剥がれてしまい、急激に視力が低下する病気です。年間1万人に1人が発症するといわれ、網膜に弱い部分がある方や外傷がきっかけで起こる場合もあります。放置すると「増殖硝子体網膜症」という治りにくい病気に進展する可能性があるため、発症した場合は早期の手術が必要です。

緑内障治療

緑内障は、眼の中の圧力である「眼圧」が高くなることで視神経が障害され、視野の一部が欠けたり視力が低下する病気です。40歳以上では約20人に1人が緑内障とされますが、初期は自覚症状に乏しく進行も緩やかなため、気付かないうちに進行し、場合によっては失明に至ることもあります。そのため早期発見と継続的な治療が非常に重要です。

緑内障で一度失われた視野は回復しませんが、眼圧を下げることで進行を遅らせることができます。とはいえ、眼圧をただ大きく下げれば良いわけではありません。点眼薬には副作用があり、手術には合併症のリスクも伴います。そのため、緑内障治療の目標は「生涯にわたり視機能を保ち、できる限り不自由のない生活を続けていただくこと」であり、患者さんごとに眼圧や年齢、ライフスタイルなどを考慮したオーダーメイド治療が必要です。

当科では、眼圧検査や視野検査に加え、最新の光干渉断層計(OCT)による視神経解析や3D写真記録、炎症性疾患に対するレーザーフレア値測定など、客観的なデータを活用し、診断の正確性を高めています。これらの情報は電子カルテで統合され、治療方針の決定や術後管理に役立つとともに、難症例についてはカンファレンスで複数医師が検討し最適な方針を導き出します。

治療はまず点眼薬による眼圧下降から始まります。現在は薬の種類も豊富で、多くのタイプの緑内障に対応可能です。当院では大学病院の特性を生かし、最新の薬剤も含め幅広い処方を行っています。点眼で十分なコントロールが得られない場合には手術が選択されます。線維柱帯切除術や流出路再建術、各種インプラント手術など、ほぼすべての術式に対応可能で、効果やリスクについて十分にご説明したうえで施行しています。

また、当科では既存の治療に加え、新しい手術法の研究・開発にも積極的に取り組んでいます。冷却レーザー虹彩切開術や線維柱帯切開術の改良など、これまでも新しい技術を発信してきました。今後も緑内障治療の負担を減らし、患者さんの利益につながる医療を提供できるよう努力を続けてまいります。

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